新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、内視鏡診療に携わる医療スタッフの感染防止対策が急務となる中、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)において被験者から排出される飛沫を捕捉してエアロゾル拡散を低減させるための新規デバイスを、地域医療機能推進機構仙台病院の遠藤博之医師と東北大学大学院医学系研究科の正宗淳教授、小池智幸准教授らが考案した。
内視鏡診療では、被験者の体液(唾液など)に直接接触するリスクがある他、上部消化管内視鏡検査中は被験者がマスクを外さざるをえない状況となるため、被験者の嘔吐反射や咳に由来する飛沫やエアロゾルに暴露するリスクがある。医療スタッフはマスク、フェイスシールド、ガウン、グローブ、キャップなどの着用による個人防護をしているが、被験者由来の飛沫やエアロゾルの拡散への対策はほとんど普及していないという。
また、感染が疑われる被験者であれば検査の中止・延期が可能だが、無症状の感染者は内視鏡診療の現場に紛れ込んでしまう可能性があり、医療スタッフや他の被験者へ感染拡大をきたすことが懸念される。こうした背景から、今回、全ての被験者に適用できるよう、簡便かつ低コストで実現可能なデバイスの考案に至った。
このデバイスは、不織布に切れ込みを入れて内視鏡用マウスピースに固定したもので、装着すると、不織布が被験者の口元や鼻を覆い、中心部の切れ込み部を介して内視鏡の挿入が可能な状態となる。本デバイスにより、上部消化管内視鏡検査において被験者から排出される粗大な飛沫が捕捉され、エアロゾル拡散の低減が期待できる。被験者の呼吸や術者の内視鏡操作のストレスは問題ないレベルだという。
従来の新型コロナウイルス感染症の感染防護策に加えて、本デバイスは全内視鏡検査に適用できる新たな標準予防策になりえるものであり、内視鏡診療を介した新型コロナウイルス感染症拡大抑止の一助となると期待される。