大阪大学レーザー科学研究所の村上匡且教授が率いる日米欧共同研究チームが、前人未到のメガテスラという極超高磁場を生成する新たな物理機構を発見した。
病院で使われる磁気断層写真(MRI)や磁気ネックレスなど、磁場は我々の実生活で大いに活用されている物理要素である。将来のエネルギー源と目される磁場核融合やリニアモーターカーでは、キロテスラの高強度磁場が必要とされるなど、磁場強度の増強は科学技術の最先端を切り開くが、現在地上で生成可能な最大の磁場強度は1~2キロテスラにとどまっている。
一方、本研究では、従来の高強磁場発生の手法とは全く異なる原理に基づき、キロテスラのさらに千倍強力なメガテスラを実現する新原理「マイクロチューブ爆縮」を発見したという。「マイクロチューブ爆縮」は、ミクロンサイズの中空円筒体に強力な超短パルスレーザーを照射することにより、メガテスラ級の極超高磁場を生成させるもので、スーパーコンピューターを使った数値実験で原理実証に成功した。
この物理機構に基づき、今後実際に、メガテスラ級の極超高磁場を地上で実現することができれば、これまで議論の俎上にさえ載らなかったような量子電磁力学効果や極超高磁場下の物性研究、さらには中性子星やブラックホール近傍において予測されているメガテスラ磁場に関連した宇宙物理など、未踏の研究領域の開拓・発展と共に多岐に渡る応用が視野に入ってくる。世界の大型レーザー施設を使った極超高磁場生成に関する研究に大きな弾みをつける成果と言える。