法政大学島野智之教授、竜洋昆虫自然観察公園柳澤静磨職員、鹿児島大学坂巻祥孝准教授の研究チームは、南西諸島(鹿児島県~沖縄県)から新たに2種の「ルリゴキブリ属」のゴキブリを発見した。ブルーメタリックに黄色い帯の美麗種2種で、ルリゴキブリ属のゴキブリは日本ではこれまでに石垣島、西表島に生息する「ルリゴキブリEucorydia yasumatsui」1種のみが知られていた。
「黒い」「汚い」イメージのゴキブリだが、日本(南西諸島)から東南アジアにかけて分布する「ルリゴキブリ属」のゴキブリは、非常に美しい青色の金属光沢や、鮮やかな橙色の紋などを持ち、いわゆる美麗種といわれる。人家に出入りすることはなく、通常、森林内の朽ち木内などで、腐植質などを餌に生活をしている。
今回発見したうちの1種、「アカボシルリゴキブリEucorydia tokaraensis(ユーコリディア・トカラエンシス)」は宇治群島家島、トカラ列島悪石島、奄美群島奄美大島、徳之島に分布しており、オスの全長が12.0~13.0mm、上翅に黄赤色の3つの紋を持つことが特徴。もう1種の「ウスオビルリゴキブリEucorydia donanensis(ユーコリディア・ドナンエンシス)」は八重山列島与那国島にのみ生息し、オスの全長が12.5~14.5mm、腹部は紫色で、上翅に不明瞭な黄赤色の帯状紋を持つことが特徴。現在、日本産ゴキブリは57種が知られており、今回2種を新種として記載したため、合計59種となった。このうち、人家の中に出現するのは、1割程度という。
今回の研究では、日本産と台湾産のルリゴキブリ属の系統関係を解明するために6遺伝子座を用いてDNA解析を実施。その結果、台湾産1種と日本産のルリゴキブリ3種に明瞭に分かれた。今回の発見は、いずれも稀種で、オスメスを同時に採集することが困難であるにもかかわらず、柳澤氏による粘り強い現地調査と、飼育によって、幼虫から成虫までを詳細に研究し、詳細な形態計測などを行った。森林で分解者として有益なゴキブリの日本での多様性解明に一歩近づく研究として期待される。