東京大学医学部附属病院の大沢樹輝氏、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介氏、株式会社ミナケアの山本雄士氏、TXP Medical株式会社の後藤匡啓氏の研究チームは、医療機関受診データと健診データを用いた機械学習モデルにより、将来高額医療費が必要となる患者の予測が可能なことを示した。
2019年度の日本の年間医療費は43.6兆円となり3年連続で過去最高を更新。増大する医療費の増加をいかに食い止めるかは、高齢化が進む日本だけでなく、先進国共通の問題でもある。しかし、医療費抑制に成功している先進国はほとんどなく、現在も多くの研究がなされている。効率的な医療費抑制を図る上では、特に将来医療費が高額になることが見込まれる集団に対して、予防的な医療介入が必要なことが示唆されているものの、こうした集団を正確に予測することは簡単ではなかった。
そこで研究チームは、ヘルスケアベンチャーの株式会社ミナケアが保有する医療機関受診データなどから、将来医療費が高額になることが見込まれる集団を同定する機械学習予測モデルを構築し、その精度について検証を行った。機械学習は人工知能の一種であり、多くのデータを学習させることで従来の予測モデル(ロジスティック回帰モデルなど)と比較して、より正確な予測を行うことに長けることが知られている。本研究ではランダムフォレストやニューラルネットワークなどといった代表的な機械学習モデルを使用した。
研究の結果、この機械学習モデルを用いることで将来上位5%の高額医療費患者となるリスクを高い精度で予測すること(AUC値:0.84)が可能であることが示され、また、予測モデルを構築にするにあたり、従来の予測モデル(ロジスティック回帰モデル)と比較して、機械学習モデルがより有用であることも示された。
本研究によって開発された機械学習予測モデルによって、将来医療費が高額になることが見込まれる集団を事前に同定することができると考えられ、より医療が必要な集団に対して早期に介入することで、医療費の適性化や効率的な医療の提供を実現できる可能性がある。今回開発した機械学習予測モデルは、より効率的な医療を実現するためのサービス開発や、健康経営を推進するためのプログラムの設計等さまざまな場面での活用が期待できる。