日本人の成人において恋愛や異性との交際に興味を示さない、いわゆる「草食化」が社会現象として指摘される中、その実態については依然として明らかでないことも多い。
今回、東京大学のグループは、これまでよく調べられてこなかった、異性と交際をしていない人や異性との交際に興味がない人の割合、その経年的変化、またこれらに影響を与える要因について、国民全体を代表するデータを用いて調査するために、1987年から2015年に行われた国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査のデータ分析を行った。
その結果、過去30年間に未婚かつ異性と交際していない人(シングル)の割合は着実に増加しており、2015年では30代女性の4人に1人が、男性では3人に1人がシングルであった。1992年から2015年でみると、18~39歳のシングルの割合は、女性では27.4%から40.7%に、男性では40.3%から50.8%に増大。年齢グループ別でみると、年齢階級が上がるほど、シングルの割合が大幅に上昇していた。これは、同時期にみられる婚姻割合の大幅な減少をほぼそのまま反映する結果であった。
また、異性との交際への興味については、2015年調査においてシングルと回答した人のうち、約半数が異性との交際を望んでいないと回答したという。さらに、男女ともに、異性との交際に関心がないと回答したシングルは、関心があると回答した人に比べて、学歴や収入が低いという傾向が浮き彫りになった。
健康や生活の満足度に恩恵をもたらす社会的なつながりは異性との交際以外にもあるのはもちろんだが、若年成人が恋愛への興味を失っていることは、世界でも極めて低い日本の合計特殊出生率に寄与しているとも考えられている。今回の研究は、雇用や収入状況が異性との交際機会の有無にも影響していることを明らかにしたことから、これらの改善を目指す政策は、恋愛や結婚への関心の高まりにつながる可能性も示唆している。