不妊症や不育症の女性のうち、約35%が新型コロナウイルスの感染拡大で精神的に不安定な状態になり、約40%が治療を再考、約15%が治療を延期していることが、岡山大学大学院保健学研究科の中塚幹也教授らの調査で分かった。中塚教授らは新型コロナによる経済的な不安が治療の延期につながっている可能性があるとみている。
岡山大学によると、中塚教授らは7~9月に岡山県と広島県の生殖医療施設4カ所で不妊症や不育症の女性を対象にアンケート調査を実施、精神状態や経済的な状況について聞き取った。その結果、精神的に不安定な状態となった女性にうつや不安症の疑いが持たれる人が増加していた。
年収が減少すると考えている女性は約38%に上り、約60%が「経済的に不安がある」と回答した。約85%は「経済状況が不妊症や不育症の治療に影響する」と答え、経済的な困窮が治療の断念や延期につながる可能性が推測された。
日本生殖医学会は4月、新型コロナが妊婦や胎児に与える影響が不明で、治療薬が妊婦への使用を禁じられていることなどから、妊娠時に使用できる予防薬や治療薬が開発されるまで不妊治療の延期を選択肢として患者に提示するよう声明を出している。
しかし、治療を受けている女性はコロナ禍での治療に不安を感じる一方、年齢が高くなるほど妊娠率が低下することなどから、対応に苦慮している。研究グループは不妊治療の保険適用に先駆け、不妊症カップルへの助成拡大、経済的支援を検討する必要があるとしている。