筑波大学と国際基督教大学(ICU)は4月6日、今年度からスタートする新たな連携協定について記者発表と調印式を行った。
具体的な施策としては、双方が共同して行う派遣・受け入れ留学のプログラム開発や新たな科目の開設のほか、主に医学医療系、スポーツ科学系、芸術系等を学びたいICUの学生が筑波大で卒業研究の指導を受けたり、筑波大の学生が、英語開講科目を中心にICUの基礎科目を履修したりすることなどが挙げられている。
また、連携先の国外の協定校に留学することも可能になるため、双方の学生はより多様な留学プログラムを選択できるようになる。ちなみに筑波大学は、アジア、アフリカ、中南米など幅広い地域に約320校、ICUはヨーロッパ、アメリカを中心に約70校の協定校を持つ。
交流する学生数は、初年度はそれぞれ10から20名程度を想定しているが、原則受け入れ人数を制限しないことも、これまでの学生交流とは異なるとしている。
文科省のスーパーグローバル大学事業に採択されている大学同士、また知名度の高い国立と私立ということで注目された今回の発表だが、連携の趣旨には、急速に進む少子化の中で優秀な学生を確保するには、それぞれの資源・強みを活かし、国立・私立の枠を超えてトランスボーダーな連携を図る必要があるという両大学の強い危機感が反映されている。また筑波大学は英語による教養教育の、ICUは理系教育の一層の充実を期していることも示された。
挨拶に立った筑波大学の永田恭介学長は、「大綱化以降、多くの大学が大きな意味でのリベラルアーツ教育を失いつつある中で、ICUが創立以来、高い水準でそれを続けてこられている点こそがわれわれにとっての最大のメリット」、また「私立大学とはすでに早稲田大学や東京理科大学と連携を進めてきているが、今回は学生の教育の視点に立ったもの、リベラルアーツと専門科目をうまく組み合わせて、人材養成の過程をともに構築していこうというという点がこれまでとは明らかに違う」と補足した。また大学のトランスボーダー化については、「近年、学生も育てるべき人材も多様化し、一組織が持てる資源だけでは十分に対応できないことが多い。その中で今回のように、国立大学と私立大学とが互恵的な教育・研究の連携を結ぶことは、一つのパラダイムシフトだと考えている」と語った。
ICU の日比谷潤子学長は、「リベラルアーツ大学、リベラルアーツ教育に対する認知と理解は、2000年代前後からアジアでも広がり、日本でも『国際教養』を看板にした大学や学部がいくつかできるなど、その評価はますます高まっている。こうした中、既に連携を結んでいる近隣の東京農工大学や東京外国語大学に加えて、より幅広い分野を持つ筑波大学と協定することは大変ありがたい」とした上で、「ICUの学部では、人文科学・社会科学・自然科学・学際領域合わせて31のメジャーと呼ばれる専修分野が専攻でき、リベラルアーツ大学の枠組みの中でそれぞれの専門性を深められるようになっているが、規模、教員の数ともに筑波大学に比べるとずっと少ない。そのため、理系を中心にICUでは十分にカバーできない分野で卒業研究をしたいという学生にとってのメリットは特に大きい。またICUには元々、大学院で筑波大学へ進む学生も少なくないため、彼らにとっては、学部時代から筑波大学の様子を見せてもらい、そこで早めに勉強を始められるのも大きなメリットだ。もう一点、ICUの学生には世界の様々な国や地域への留学希望者がとても多いため、これまで世界のリベラルアーツ大学の連合に加わるなど、留学先の拡充に努めてきた。今回、筑波大学の多様な国や地域への多数の派遣プログラムに学生が参加できるようになり、学修の幅がさらに広がる」と連携の意義を語った。
両大学の学期制の違い(筑波は2学期制、ICUは3学期制)やキャンパスが離れていることへの懸念に対しては、両大学それぞれの担当者から、セメスターは複数のモジュールに分かれているので対応可能との回答があったほか、それぞれの寮を有効活用することを学生に勧めていくとの説明があった。留学派遣・受け入れプログラムの共同開発、合同での科目開設などについては今後の課題とされた。