東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、宇宙の加速膨張の謎に迫るため、「すばる望遠鏡」を用いて遠方宇宙にある銀河の距離を測定して三次元マップを作成、その成長速度の測定にも世界で初めて成功した。これはKavli IPMUを中心に東京大学、東北大学などで行われた国際研究によるもので、日本天文学会誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」オンライン版に掲載された。
ビッグバン以来、膨張を続ける宇宙。理論上では、その膨張はいずれ減速するはずだが、むしろ加速膨張していることがわかっている。その原因として宇宙論が基礎に置く「一般相対性理論」が破綻しているなどの可能性が考えられるが、解明はされていない。
アインシュタインの重力理論「一般相対性理論」を検証するには、銀河までの距離を測定し、宇宙における銀河の3次元分布を調べる方法が有力だが、これは約100億光年までという比較的近い宇宙に限られている。
今回、同研究グループは銀河サーベイ「FastSound」により、平均130億光年の距離にある約3000個の銀河までの距離を測定、3次元大規模構造マップを完成させた。また、地図中での銀河の運動を詳細に調べ、99.997%という高い有意度で成長速度の測定にも成功した。その成長速度が一般相対性理論の予想と測定誤差の範囲で一致することも確認したという。
アインシュタインはかつて「宇宙の大きさは変わらない」ということを主張するため、一般相対性理論に「宇宙定数」を加えたが、ハッブルが宇宙の膨張を発見すると導入を撤回している。しかし、現在の加速する膨張宇宙は、一般相対性理論に宇宙定数を加えることで説明でき、今回の観測結果はこのモデルを支持するものだ。
一方で宇宙定数の物理的な起源は謎のままである。今回の結果をもとに、現在開発が進む新観測装置によって、さらなる世界的な結果を出すことが期待される。