北見工業大学の奥村貴史教授らによる公衆衛生情報学チームは、有限な検査キットをどのように患者に分配するかという問題に対して、地域のインフルエンザ患者数データを活用し、患者数の予測値に基づく検査キット配分法を提案し、その有用性を示した。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのような状況では、検査できる数よりもはるかに多くの患者が生じる。その際、限りのある検査の配分が問題となる。これまで「ワクチン接種」や「治療薬」を用いた介入の効果を最大化する研究はあったが、死者数の減少等に直接影響を及ぼさない「検査」については、資源配分問題の対象となっておらず、先行研究はごく少数に限られていた。
そこで、研究チームでは、北見医師会が以前より集計していた地域の医療機関におけるインフルエンザの全患者数データを利用し、感染症の患者がどのように拡大・終息するかの説明に用いられるモデル(SIRモデル)を使い、患者の受診数を予測する数理モデルを構築した。この患者数予測を組み入れた配分の有効性を評価したところ、最適配分との誤差が小さく、在庫がゼロになる事態を避けシーズン終了時に余り過ぎないという二つの点で有効性が示された。
インフルエンザとは流行パターンが異なる新型コロナウイルス感染症への応用は、今後患者受診モデルの修正や検査の実施に求められる各種の現実的な状況に対応していく必要があるとする。今回の研究は、公衆衛生学において「有限の資源をいかに効率的に分配するか」という問題が工学的アプローチにより解決しうることを示したものとしている。