2011年の東日本大震災で被災し、家屋が全壊または流出した子どもたちは、未来の大きな利益より目先の小さな利益を選択する傾向があることが、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の藤原武男教授、松山祐輔助教らの調査で分かった。
東京医科歯科大学によると、研究には米ハーバード大学、東京大学、岩手医科大学、福島リハビリテーションセンターの研究者らも参加。厚生労働省と文部科学省、明治安田こころの健康財団の支援を受けた。
研究グループは東日本大震災当時、岩手、宮城、福島の3県で保育園に通っていた167人の子どもを対象に2014年、調査を実施した。子どもたちにコイン5枚を渡し、コイン1枚ですぐに1個のキャンディをもらうか、コイン1枚で1カ月後に2個のキャンディをもらうかを選んでもらった。
その結果、自宅が全壊や流出した、津波で流される人を目撃したなど、悲惨な経験をした子どもほど今すぐキャンディをもらえる方にコインを置く傾向が強かった。特に、自宅が全壊や流出した子どもたちは自宅に被害がなかった子どもたちに比べ、0.5枚以上余分に今すぐもらえる方へコインを置いていた。
研究グループは悲惨な経験をした子供たちは将来より今の利益を優先する傾向があるとみている。
論文情報:【PLOS ONE】Delay discounting in children exposed to disaster