日本人宇宙飛行士の活躍など、宇宙にまつわる情報が身近なものになった一方で、宇宙用語の手話表現は少なく、耳の聞こえない人たちが楽しむには表現の少なさという「壁」があるという。JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、耳の聞こえない人を対象に手話案内ツアーを開催しているが、その際宇宙の用語は、通常の手話と同様に指文字を使って表現し、手話表現のない単語は指文字で一文字づつ表すことになるが、単語そのもののイメージから離れてしまうことが多く、何より一文字づつ指を動かさなければならないため時間がかかるものだった。
「宇宙のことを説明できる手話があれば、もっとわかりやすくイメージできるようになるのではないか」。聴覚障害のあるJAXA広報部・春日さんの思いから、東洋大学手話サークル「つみき」に協力を依頼、宇宙手話の開発がはじまった。
最初に宇宙用語の候補として挙がった21語から15語の試作を作成、最終的に「JAXA」「国際宇宙ステーション」「船外活動」宇宙ステーション補給船「こうのとり」「宇宙船」小惑星探査機「はやぶさ」※の6語が完成した。※「はやぶさ」は既存の手話
そのものの働きや役割をイメージしやすく伝えられる手話を目指して作られた6語。1語を作るのにすぐ決まることもあれば、難航することもあったという。例えば「船外活動」では、浮遊しながら宇宙空間へ出る様子をイメージ。「宇宙船」では、海を行く船ではなく「宇宙の船」らしさについて熟考を重ね、最終的に「船」を「箱」の形に言い換えて「宇宙(空間)」+「箱」という手話表現とした。
「つみき」代表の宮原英里衣さん(国際地域学部3年)は、「自分たちで手話を新しく作るのは初めてだったが、宇宙に詳しくない人にでもわかるようにと心がけた。この体験をもとに、もっと宇宙手話の数を増やしていきたい」と話している。「つみき」メンバーも参加した手話用語の解説動画は、今後JAXAのWebサイトで公開される予定という。