芝浦工業大学工学部応用科学科の山下光雄教授が、紙おむつの吸収剤を石油由来のものから天然由来の素材に置き換えることで、分解微生物による生分解を取り入れた廃棄プロセスの開発に成功した。
通常、使用済み紙おむつは焼却処理となるが、生ごみと同等の水分を含む使用済み紙おむつの焼却は、焼却効率を下げ、二酸化炭素排出を促進させるとともに、焼却炉を劣化させる原因の一つとなっている。また、高齢化社会の進行による需要の高まりから、紙おむつ排出量は増加傾向にあるという。
そこで今回、山下教授は、吸収剤を石油由来から天然由来の生分解性セルロース系素材に置換した紙おむつを提案し、セルロースを生分解する合成微生物「セルロモナスジェリダ」によっておむつ全体の7割を生分解可能とすることに成功した。セルロモナスジェリダを添加して溶液化することで、水分を含むセルロース系吸収剤50gが、12時間後には1.5gになることが確認されたという。
さらに、CMC(カルボキシメチルセルロース)と架橋剤EGDE(エチレングリコールジグリシジルエーテル)から山下教授が合成したセルロース系吸収剤は、市販の紙おむつの吸収量210gを超えて最大吸収量260gとなることも確認された。
生分解により溶液化したおむつと吸収剤が吸収した水分は排水処理が可能なため、焼却負荷を軽減した“カーボンニュートラル”な廃棄プロセスが実現したと言える。山下教授は今後の研究で、紙おむつ構成材の残り3割を構成する非生分解性プラスチックを分解できる微生物の獲得、またはその部分を生分解可能な素材に置き換えるための研究を推進するとしており、これが実現すれば、紙おむつを完全に生分解することが可能となると期待される。