北海道大学総合博物館の小林快次教授らの研究グループは、2004年に兵庫県淡路島南部の洲本市の白亜紀最末期(約7,200万年前)の地層から発見された恐竜化石が、原始的なハドロサウルス科であるとし「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名した。研究グループには他に、岡山理科大学、兵庫県立人と自然の博物館、米国・サザンメソジスト大学が参加。
ハドロサウルス科の恐竜は、吻部に長く平たいカモのようなクチバシをもつ、白亜紀で最も成功した植物食恐竜。洲本市の化石(下顎の一部)は岸本眞五氏(姫路市在住)が発見した。当時の共同研究ではハドロサウルス科の中でも派生したランベオサウルス亜科とされた。
今回、この化石が他の白亜紀後期のハドロサウルス類にはない歯の特徴を持つことから、新属新種の恐竜類と判明。古代の日本国家を示す「倭(やまと)」と日本神話に登場する男神「伊弉諾(イザナギ)」から「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名された。
研究グループはハドロサウルス科の起源がアジアとアメリカ東部(アパラチア)であり、その後アジアで大繁栄したと示唆し、繁栄の鍵はこれまで食に関わる顎や歯の進化とされていたが、肩や前肢の進化の重要性も指摘する。
また、ヤマトサウルスは発見された地層より約2千万年前から生息していた可能性も提唱。当時の東アジアは原始的なハドロサウルス科にとって2千~3千万年間、昔のままの種が残存する地域(レフュジア)だった可能性がある。また、白亜紀後期後半にハドロサウルス科で進化型のカムイサウルス(2019年命名)が北海道に出現したが、ヤマトサウルスはカムイサウルスと地域的に棲み分けて白亜紀末期まで生き延びた可能性があるという。