赤ちゃんが「超自然的で反直観的な能力と社会的優位性とを結びつける」判断バイアスを持っていることを、大阪大学、高知工科大学、九州大学、オックスフォード大学のグループが明らかにした。
人類史上、多くの宗教的集団において超自然的な力を持つとされる存在が権威を得てきたことは、人類学・社会学・宗教学等様々な分野で広く指摘されている。しかし、こういった傾向をもたらす人間の心理的基盤がどのようなもので、それがいかにして成立するかという発達的な起源に関する理解は十分ではなかった。
本研究では、「九州大学赤ちゃん研究員」に登録されている生後12~16カ月の乳児を対象に、視線を用いた行動実験を行い、超自然的な力と社会的優位性とを結びつける判断バイアスを持ちうるかを検証した。具体的には、画面に超自然的能力(空中浮遊・瞬間移動)を持つ/持たないキャラクターをそれぞれ提示した上で、両者が競合し、どちらか一方が資源を勝ち取る結末を乳児に見せた。
その結果、乳児は「超自然的な能力を持つキャラクターが勝負に負ける」結末を、その逆と比べてより長く注視することがわかった。このことは、乳児が「超自然的な能力を持つキャラクターが勝負に勝つ」ことを期待しており、その期待が裏切られたことに驚きを示した(より長く見た)と解すことができる。すなわち、乳児はある種の「物理法則」を理解した上で、「超自然的・反直観的な力を持つ者は社会的に優位である」と期待する傾向を既に備えている可能性が示唆された。
本研究成果は、優位性関係を含むヒトの社会性の起源の理解に発達研究から貢献する成果といえる。