日本医療研究開発機構らは、2013年~2015年度に東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査に参加した63,002人分について分析し、その調査結果を公表した。
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興事業として計画され、宮城県では東北大学東北メディカル・メガバンク機構、岩手県では岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構が事業主体となり、15万人の参加を目標とした長期健康調査。2015年度末までに参加募集を完了し、84,073人が調査に参加。今回は、そのうちの2013年~2015年度に宮城県内(28市町)および岩手県内(18市町村)の特定健康診査会場等で参加した63,002人分の調査結果を分析した。
調査では、メタボリック症候群に該当する割合は男性24.8%、女性8.2%。男性は自宅被害なしの者に比べ、自宅が全壊した者は1.29、大規模半壊した者は1.26とリスクが高くなった。また、非喫煙者に比べ、喫煙者(1日20本以上)で男性1.13、女性1.98、非飲酒者に比べ、1日3合以上の者は男性1.12、女性1.67とリスクが高くなった。逆に身体活動量が高い者は1標準偏差上昇あたり男性は0.85、女性は0.88と有意にメタボリック症候群のリスクが低くなった。
これらの結果から、震災による自宅の被害の程度は、喫煙・飲酒・身体活動量・心理的苦痛・抑うつ症状を考慮してもなお、統計学的に有意なリスク上昇との関連が認められた。このほか、内陸部に対して沿岸部では、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠、およびPTSRのオッズ比が高いこと、高血圧等の治療中断率が高いことなどもわかった。
今後は調査の分析をより進めるほか、調査でわかった抑うつ状態のハイリスク者、PTSR(外傷後ストレス反応)のため日常に支障を呈すると回答した参加者を対象に、機構専属の心理士が電話で経過を尋ね、必要に応じて、カウンセリングや相談に応じるなど支援活動を行っていく。2016年12月末までに、地域住民コホート参加者のうち、1,922名のハイリスク者に対して、3,880回の電話かけを行い、1,380名の対象者に支援を行ったという。