神奈川科学技術アカデミー、東京工業大学の研究グループは、ペロブスカイト型酸化物コバルト酸鉛(PbCoO3)の合成に成功し、鉛とコバルトの両方が電荷秩序(異なる価数の同元素イオンの周期的配列)を持った、他に例のない電荷分布が実現していることを発見した。研究グループには他に、大阪府立大学、早稲田大学、中央大学、学習院大学、九州大学、各種研究機関が参加している。
ペロブスカイト型酸化物は、一般式ABO3で表される元素組成を持つ、金属酸化物の代表的な結晶構造で、多彩な機能を持つため盛んに研究されている。ABO3のAサイトに鉛(Pb)、Bサイトに元素周期表の第4周期の金属元素(3d遷移金属)を含むペロブスカイト型酸化物として確立していたのは、強誘電体としてよく知られているチタン酸鉛だけだった。
近年、同研究チームによって、さまざまなペロブスカイト型酸化物において、Bサイトでチタン(Ti)からニッケル(Ni)へと元素周期表を右に進むにつれて、Aサイトの鉛(Pb)の価数が増加し、遷移金属の価数が減少する傾向が分かりつつあったが、PbCoO3はこれまで合成されていなかった。
今回の研究では、超高圧(15万気圧)を用いることで、世界で初めてPbCoO3の合成に成功した。さらに、放射光X線と中性子線を用いた研究で、ペロブスカイト型構造の、AサイトにPb2+とPb4+が1:3で、BサイトにCo2+とCo3+が1:1で秩序配列した、四重ペロブスカイトと呼ばれる特殊な電荷分布を持つことが明らかになった。
四重ペロブスカイトは巨大誘電率、磁気抵抗効果、負の熱膨張、酸素還元・酸素発生触媒など様々な機能を持つことから注目されている物質群である。今後PbCoO3を改質することで、こうした機能の発現が期待される。
(注)本文中O3の3は下付き文字、Pb2+などの2+は上付き文字。