芝浦工業大学の赤木亮太准教授らの研究グループは、静岡産業大学、エディス・コーワン大学(オーストラリア)と共同で、運動による骨格筋(筋肉の総称)の損傷程度を評価する指標として、運動1日後の最大随意等尺性収縮(MVIC)※トルクの回復率が利用できる可能性を明らかにした。
激しい運動やスポーツ活動すると1〜3日後に筋肉痛が生じる。筋肉痛は、骨格筋がその長さを伸ばしながら力を発揮する伸張性(エキセントリック)運動によって生じる。多くの場合、筋肉痛は自然に治まるが、放置すると身体に支障をきたすこともあり、運動後の症状回復を予測する方法が求められている。
今回、若年男性28名の右脚の膝関節伸展筋群を対象に、筋力計を用いて、全力での伸張性運動を合計100回(10回×10セット)実施した。運動前と運動後に複数回各種変数を測定し、膝関節伸展筋群の損傷予測に適した指標を調べた。この研究では、筋力計を用いて、運動後3日間のMVICトルクの変化を測定。その他、「剛性率」(骨格筋の硬さ)や、膝関節伸展筋群を制御する神経を外部から刺激したときに生じる「doubletトルク」なども調べた。
実験参加者を、運動直後から1日後のMVICトルクの回復率によって、2つの異なるグループに分類した。そして、運動直後から1日後のMVICトルクの回復率は、その後の筋力変化の予測に使えることが分かった。しかし、遅発性の筋肉痛の程度や骨格筋の硬さの変化の予測はできなかった。
限界はあるものの、MVICのトルク変化は、運動後の筋損傷の症状の有用な予測指標として活用できる可能性が示された。今後、筋損傷の大きさを予測する最適な方法を確立したいとしている。
※筋肉の長さを一定にした場合の随意的な最大収縮