京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)と大手電機メーカーの日立製作所(本社・東京、東原敏昭社長)は、健常者のiPS細胞パネルの構築に向け、協力することを合意しました。今後、日立が運営する日立健康管理センター(茨城県日立市)が集めた血液、健診データを基に、iPS細胞の医療応用に向けたプラットフォームとなるiPS細胞パネルを構築します。
今回の合意により、日立健康管理センターは健康診断に来る健常者からドナーを募り、血液を採取するとともに、健診データを匿名化してiPS細胞研究所に提供。iPS細胞研究所は血液細胞からiPS細胞を作成し、多様な性別、年齢層のドナー約100人からなる「日立iPS細胞パネル」を構築します。iPS細胞のうち、ドナーの合意を得られたものは公的細胞バンクの理化学研究所バイオリソースセンターに寄託します。構築費用はiPS細胞研究所が負担します。
iPS細胞研究所はこれまで、さまざまな病気を持つ人の細胞からiPS細胞を作成し、公的細胞バンクに預けて、多くの企業や研究者が利用できる環境づくりをしてきました。しかし、研究の推進には、こうした病気にかかっていない健常者の細胞から作成したiPS細胞と比較検討しなければならず、健常者のiPS細胞と健康に関するデータで構成された健常者のiPS細胞パネル構築が欠かせません。
しかも、健常者のiPS細胞パネルには、将来もドナーが病気にかかっていないことを確認する必要があるため、長期間にわたって健康データを入手する必要があります。そこで、iPS細胞研究所は、多数の健常者データを持ち、医療の発展に貢献してきた日立と協力して健常者のiPS細胞パネルを構築することにしました。
健常者のiPS細胞パネル構築により、特定の病気の発症原因や進行過程などこれまで分からなかった病気の詳しい解明や、新たな治療法、医薬品の開発につながることが期待されています。
※iPS細胞パネル 人の細胞から作成したiPS細胞(人工多能性幹細胞)の多様な遺伝形を反映させ、網羅的に評価したもの。