九州大学大学院、岡山大学、ジョンズ・ホプキンス大学(米国)の研究グループは、かゆい皮膚を繰り返し引っ掻くことにより神経でNPTX2というタンパク質が増え、それがかゆみ信号伝達神経の活動を高めることを世界で初めて発見した。
かゆみを感じたとき、私たちはかゆいところを引っ掻く。通常であれば、数回引っ掻くとかゆみは治まるが、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などに伴う慢性的な強いかゆみだと、何回も繰り返して引っ掻いてしまう。それによって皮膚の炎症が悪化し、その結果、かゆみがさらに増すという悪循環となる。これは、「かゆみと掻破(そうは)の悪循環」と呼ばれ、かゆみを長引かせる大きな原因とされるが、メカニズムはよく分かっていない。
研究グループは、何回も繰り返し皮膚を引っ掻くアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎モデルマウスで研究を行い、皮膚からのかゆみ信号を脳へ送る脊髄神経(かゆみ伝達神経)の活動が高まっていること、皮膚への引っ掻き刺激を抑えるとそれが起こらないことを見いだした。さらに、皮膚を繰り返し引っ掻くことで、皮膚と脊髄をつなぐ感覚神経でNPTX2というタンパク質が増え、これが脊髄のかゆみ伝達神経に作用すると、その神経の活動が高まってしまうことを発見した。実際に、NPTX2を無くしたマウスでは、脊髄のかゆみ信号伝達神経の活動が低下し、かゆみも軽減した。
今後、NPTX2が神経で増えるのを抑えるような化合物、あるいはNPTX2の作用を阻害するような化合物が見つかれば、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などで生じる慢性的なかゆみに有効な治療薬の開発につながることが期待されるとしている。