東京農工大の遠藤章特別栄誉教授が開発したコレステロール低下薬「スタチン」が、国立科学博物館から2015年度の重要科学技術史資料(愛称・未来技術遺産)に選ばれました。登録証の授与式は東京都台東区の国立科学博物館日本館であり、10月4日まで日本館1階ホールでパネル展示されています。
スタチンはコレステロールを合成する酵素の働きを阻害し、強いコレステロール低下作用を示す薬物の総称。スタチン類で最初に見つかったのがメバスタチンで、1973年に遠藤教授が大手医薬品メーカー・三共(今の第一三共)の研究員時代にアオカビの培養液から発見しました。その後、さまざまなタイプのスタチンが見つかり、コレステロール血症の治療薬として、各国で使用されるようになりました。スタチンは高脂血症患者の心筋梗塞、脳血管障害発症リスクを低下させる効果も明らかになっています。
未来技術遺産には、大阪大学で患者の治療に国内で初めて使ったものと同じメバスタチンの錠剤と、新薬発見のときに記録した遠藤教授の月報、助手の実験ノートが登録されました。世界で最も優れた薬の1つの発見であることや、国際的に見て日本の科学技術発展の独自性を示す資料として貴重なことが高く評価されました。
2015年度の未来技術遺産には、スタチンのほか、ソニーのエンターテイメントロボット・AIBOや富士フィルムによる世界初の高感度カラーネガフィルム、第一三共の日本初の消化酵素・タカジアスターゼ、ヤンマーのガスタービンなど24件も選ばれています。