大阪市立大学と東京工業大学の共同研究グループは、鶏卵由来のタンパク質と光エネルギーを使って水素が製造できる光触媒システムの構築に成功した。
水素はエネルギー効率が高く、利用時に温室効果ガスを排出しない究極のクリーンエネルギーとされ、石油や天然ガスなどの化石燃料に代わる将来燃料として期待されている。
しかし、現在利用されている水素の大部分は化石燃料から製造されており、製造段階で二酸化炭素が発生していること、また外部から多くのエネルギーを供給しなければならないという問題がある。そこで注目されているのが、太陽光などの自然エネルギーを用いて水素を製造する方法だ。
今回研究グループは、鶏卵から安価かつ大量に得られるリゾチームと呼ばれるタンパク質結晶に、光エネルギーを吸収する光増感剤と、得られたエネルギーから水素を合成する触媒を組み合わせて水素製造光触媒システムを構築した。電子源を含む水中でこの光触媒システムに可視光を照射したところ、水素が発生することが確認できたという。
大阪市立大学の研究グループは以前に、シリカ‐アルミナと呼ばれる無機物の材料を用いた水素製造光触媒システムを構築していたが、この時の水素の収率が76%であったのに対し、有機物であるタンパク質を用いた今回の触媒システムでは85%と高効率化に成功した。
タンパク質はさまざまな化合物と選択的に相互作用できる複数種類の官能基を持つため、無機物よりもより精密に、異なる機能を持つ分子や粒子を配置することができるという。今回の成果のように、用途に応じた触媒システムを合理的に設計できるようになれば、持続発展可能な社会の実現に繋がると期待されている。