台湾中央研究院の鳥羽儀樹研究員、工学院大学の小麦真也准教授、愛媛大学の長尾透教授らを中心とする研究チームは、アルマ望遠鏡により観測した銀河から、一酸化炭素ガスの検出に成功。従来の説と異なり、この一酸化炭素ガスは超巨大ブラックホールを持つ銀河中心からの激しい電離ガス流の影響をほとんど受けていないことが明らかになった。
ほぼ全ての銀河の中心部にあるとされる超巨大ブラックホールは、太陽の数十万倍から数億倍の質量を持つ。銀河とブラックホールは相互に影響し、ともに質量を増しながら成長するとされ、共進化と呼ばれている。
共進化に関して注目されるのは、銀河中心部からの強力な放射によって周囲のガスが電離されて吹き飛ばされる、ガス流という現象。星の材料となる分子ガスの圧縮による星形成活動の促進や、分子ガスの拡散による星形成活動の抑制に関係するとされる。
研究チームは、アルマ望遠鏡(注)を用いて、塵に覆われた銀河(WISE1029+0501)を観測。この銀河は超高速(1500m/s)で流れ出す超巨大ブラックホール起源の電離ガスが確認されていた。分子ガスの性質を知るために一酸化炭素を、星形成活動を探るために低温の塵を調査した結果、それぞれが放つ電波の検出に成功。解析により、分子ガスの激しい運動も星形成活動の促進や抑制の様子も確認されず、電離ガス流は周囲にほぼ影響していないことが示唆された。これは、分子ガスが存在するとされる銀河円盤部に対し、電離ガスの流出方向がほぼ垂直と考えると説明可能という。
ガス流の大きな影響を認める従来の報告とは異なる発見により、共進化の謎が一層深まったといえる。同様の銀河の探求・観測により解明が進むことが期待される。
(注)南米チリのアタカマ砂漠に建設された高感度の電波干渉計。