武蔵野美術大学の宮原ひろ子准教授などの研究グループは、江戸時代の古典籍に含まれる日々の天気の記録などを調査し、太陽の27日の自転周期が過去300年にわたって日本での雷の発生に影響を及ぼしてきたことを明らかにした。
太陽の活動は、よく知られている11年周期のほか、長いものでは1000年、2000年といった周期でも変動しており、地球の気候も、そうした長周期の太陽活動の変動と良く一致した変動をしてきたことが分かっている。しかし、気象のレベルでの太陽活動の影響は、断片的にしか分かっていない。
太陽の活動の中で最も短い変動周期は、自転による27日周期だ。自転の影響で、地球に届く光の量や宇宙放射線の量が27日周期で変化する。このことに着目した本研究グループは、日本における気象、特に雷と、太陽活動との関連を調べた。
調査に用いたのは、『弘前藩庁日記』と『石川日記』の江戸時代の二つの文献。これらから雷の記録を抽出し、17世紀後半から19世紀中頃にかけての約200年分の弘前、八王子、江戸における雷の発生日を調べた。その結果、太陽活動が活発化していた年ほど、雷の発生に27日周期が強く現れる傾向が確認された。これは、太陽の自転が気象のスケールでも重要な影響を与えていることを強く示唆している。
太陽活動と気候変動の相関は数多く見つかってきたが、本研究によって、太陽活動が気象のレベルでも確かに影響していることが示された。今後、太陽活動が雷の発生に影響するメカニズムを解明することにより、気候予測の精度向上や、長期的な気象予測への手がかりとなることが期待されている。