東北大学の研究グループは、ボストン小児病院の研究グループと共同で、ステロイド治療に反応性を示すネフローゼ症候群の病因遺伝子群を同定することに成功した。
国の指定難病の一つである一次性ネフローゼ症候群は、尿中に多量のタンパク質が漏れ出てしまうために血中のタンパク質が減り、全身に浮腫(むくみ)が起こる疾患。小児の慢性腎疾患で最も高頻度に発症する。
標準的に用いられるステロイド剤の治療で、高い効果が得られるステロイド感受性ネフローゼ症候群と、効果が得られにくいステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に分類される。このうちステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では多くの病因遺伝子が同定されている一方、小児ネフローゼ症候群の8割以上を占めるステロイド感受性ネフローゼ症候群では、遺伝的要因がほとんど不明のままだった。
本研究では、ステロイド感受性ネフローゼ症候群を同一家族内で発症している非常に稀な家系に注目し、患者のゲノム解析を行った。この結果と、海外の血族婚のあるネフローゼ症候群家系のゲノム解析結果を組み合わせることで、6遺伝子からなる新規病因遺伝子群を同定することに成功した。
同定した6つの新規病因遺伝子は、いずれもステロイドが関与する同一のシグナル伝達経路の因子であり、なぜステロイドがネフローゼ症候群に効くのかを理解する上で重要な知見を与えるものだという。同定されたシグナル伝達経路を治療標的とすることで、長期化による副作用が問題となっているステロイド治療に代わる、副作用の少ない新規治療の開発が促進されることが期待されている。