大阪府立大学などの研究グループは、国の天然記念物で絶滅危惧種とされる野生ニホンライチョウについて、生息数減少の原因特定を目指した野外調査を実施した。その結果、ニホンライチョウには消化管に寄生する2種の原虫が広い生息域で蔓延しており、特に繁殖・育雛期である夏場に感染率が重度で、これが生息数減少のひとつの要因となっている可能性が明らかとなった。また、遺伝子解析により原虫の1種は新種であることがわかった。
ニホンライチョウの生息数は、1980年代には約3000羽とされていたが、現在は2000羽以下に減少している。特に孵化後の雛の成育率の低さが課題だが、その原因の詳細は分かっていない。
本研究では、日本アルプスの山岳において889検体(雛72検体含む)の便を採取し調査した。原虫の陽性率は、2006年と2007年では41.7%と57.5%、2016年と2017年では34.3%と38.5%で、感染率は孵化後の育成期である7~8月にかけて上昇し、特に雛で重度に感染していた。
検出された原虫は2種類で、遺伝子解析の結果、いずれも世界でこれまでに報告の無い種だった。うち1種類は新種として、ニホンライチョウ由来を意味するE.raichoiと命名された。
原虫は通常寒さに弱く、低温下では感染しない。しかし、ニホンライチョウに寄生する原虫は、低温でも感染が可能で、寒冷地で長期間生存できるという。鶏や七面鳥から偶発的にライチョウに寄生した原虫がライチョウとともに進化し、寒冷地に適応した可能性が考えられる。
ライチョウに寄生する2種の原虫を遺伝子レベルで特定した本研究成果により、原虫対策を積極的に実施することで、ライチョウの生息数増加に向けて貢献が期待される。