広島大学の齋藤健一教授らの研究グループは、光の巨大な増強効果を酸化チタンで初めて観測した。幅広い応用が期待される。
近年、金・銀などの貴金属の微粒子等で光の増強効果の研究が盛んだ。特に、金ナノ粒子はインフルエンザの検査キットや妊娠検査薬にも利用され、最近ではがん細胞の光熱治療(体外からのレーザー照射)の材料としても研究されている。しかし、貴金属は希少かつ高価、他の金属は酸化が懸念される。そこで、安定・ 安心・安価で大きな増強効果をもつ代替物質が世界中で模索され、近年、半導体が注目されている。
酸化チタンは化学的・物理的に安定な酸化物半導体で、空気清浄、抗菌コート、くもり止め、最先端の研究では太陽電池、LED、水素製造の基幹材料など多方面に使用されている。本研究では、この酸化チタンにおいて発光の巨大な増強効果を、世界で初めて見出した。今回、巨大な増強を示す試料を極めて簡単に作製する手法を開発し、半導体として世界最高値の発光の増強度を達成し、社会で幅広く使われている酸化チタンを試料として実現した点が特色とされる。
色素分子の発光スペクトル測定により増強効果を評価したところ、酸化チタンの存在により色素分子の発光強度が 500 倍に増加。また、実験値に基づいた単一分子での増強効果は、最大30000倍の増強度を示した。その他、最大の増強を与える試料作製のレシピの作成、さらには巨大な増強をもたらすメカニズムの解明にも成功した。
今回の成果は、高効率太陽電池、高感度光センサー、省電力ディスプレイ・照明、光熱治療、光触媒効果(空気清浄、抗菌、浄水、防汚、水素製造)、日焼け止め等の高効率化など幅広い応用が期待される。
論文情報:【Advanced Optical Materials】Extraordinary Field Enhancement of TiO2 Porous Layer up to 500-fold