東北大学東北メディカル・メガバンク機構と京都大学iPS細胞研究所は、同機構が保存する6人分の血液細胞からiPS細胞を作ったことを明らかにした。いずれも健康な人の細胞で、病気治療や予防法確立を目指し、基礎研究に用いる。今後、同機構が保存する約15万人分の血液細胞から必要に応じてiPS細胞を作れる道が開けた。
東北大学によると、同機構と京大iPS細胞研究所は2016年から共同研究を進めていたが、メガバンクで凍結保存した白血球の一種からiPS細胞を作り、臓器や神経の細胞に育つ能力を持つことを確認した。
今後はiPS細胞で病態を再現して治療薬の候補を探すことに活用する見通し。同機構などは健康な人と病態を再現したiPS細胞を比較することにより、より正確な薬の効果が確認できるとみている。さらに、患者ごとに最も適切な治療法を選ぶ個別化治療が可能になり、細胞から遺伝情報を読み取って個人の体質などを把握できると考えられている。
同機構は宮城県と岩手県で住民のコホート調査(※1)を進めており、約15万人分の血液を保存している。iPS細胞を使って何千人規模の研究が培養皿の中で進められるわけで、iPS細胞の新たな活用方法が広がりそうだ。
※1 コホート調査 特定の集団を一定期間追跡することにより、環境要因、遺伝的要因と疾病発生の関連を調べる調査
参考:【東北大学】東北メディカル・メガバンク計画参加者の血液細胞からのiPS細胞樹立に成功 ~15万人分の保存血液細胞がiPS細胞研究に利用できる可能性~