九州大学生体防御医学研究所の中別府雄作主幹教授らの研究グループは、マウスの行動の性差には、活性酸素による酸化ヌクレオチドの蓄積が影響していることを発見した。
動物の脳機能や行動には性差があるが、そのメカニズムはよくわかっていない。今回、同研究グループは、ゲノムへの酸化塩基8-oxoGの蓄積を防ぐ8-oxo-dGTP分解酵素(MTH1)と8-oxoG DNAグリコシラーゼ(OGG1)の両者を欠損するTO-DKOマウスと野生型マウスを用いて、その行動や認知機能への加齢の影響を雌雄のマウスで比較解析した。
その結果、野生型マウスでは雌が雄よりも2倍程度高い自発運動量を示し、雌雄マウスともに加齢に伴って活動量が低下した。ところが、TO-DKO雌マウスでは中・老年期でも自発運動量が高いレベルのまま維持されており、MTH1とOGG1が欠損すると雌マウスにおいてのみ、海馬と側脳室下帯の神経前駆細胞の核ゲノムに8-oxoGが蓄積し、新生神経細胞がアポトーシスに陥ることを発見した。さらに、TO-DKO雌マウスでは自発運動を抑制する脳の特定部位が顕著に萎縮し、自発運動量が高いレベルのまま維持されていること、TO-DKO雌マウスでは海馬歯状回も萎縮し、軽度の認知機能障害が認められることがわかった。
女性はうつ病やアルツハイマー病などの発症頻度が男性よりも高いことが知られているが、その理由の1つとしてゲノムの酸化損傷やその修復・防御系の関与が示唆される。本知見から、男女差に注目した病気の予防や治療法の開発が期待される。