東北大学の鎌倉慎治教授らのグループは、歯科治療等で行われる骨造成のための生体材料の作製方法を改良し、生体材料のみで骨造成を可能にする新規技術を開発した。義歯の安定性向上や歯周病治療の改善が期待される。
歯は周囲を健康な骨で囲まれていることで十分に機能する。抜歯などによって顎の骨が痩せてしまう骨欠損が起きると、ものが噛めないなど様々な不具合が生じ、自家骨移植などによる骨再生を要する。しかし、世界的にも生体材料単独では骨の表面に積極的に骨を盛り上げる技術(骨造成)は確立されていなかった。
東北大学は2019年に、歯科口腔外科領域の骨欠損に対して自家骨移植を回避できる生体材料OCP/Collagen(注)を産学連携により製品化した。この生体材料は自分自身の骨形成細胞分化や血管新生を促して、元の骨と同等な性質の骨の再生を実現し、使用法が簡便で優れた費用対効果を持つ革新的生体材料であった。
今回、研究グループはOCP/Collagen作製時の予備凍結条件や密度を改良し、OCP/Collagen単独で骨造成を可能にする革新的骨造成技術を開発した。骨造成には「埋入物の形状維持」と「新生骨形成」の両立が必要だが、これまでは、生体内で吸収しない材料(非吸収材料)を併用した骨造成でも、生体材料単独による骨造成でも、両立は困難であった。開発した骨造成法は自分自身の細胞の賦活化を利用しており、簡便な手法で追加手術が不要で、従来の方法よりも汎用性に優れている。
本研究成果により、痩せた顎骨や歯周病による骨欠損の回復治療への応用や、義歯の安定性向上や歯科用インプラント植立の下支え、歯周病の改善といった治療範囲の拡大、さらに歯科治療以外の骨組織の骨造成への応用も期待できるとしている。
注:オクタカルシウムフォスフェート(OCP)と医療用コラーゲンからなる複合材料