北海道大学、帯広畜産大学、東北大学とTianma Japan株式会社らの研究グループは、抗体検査のようなバイオ検査を現場で迅速に実施できるポータブル蛍光偏光測定装置を開発。応用例として、鳥インフルエンザウイルス抗体を20分以内に検出できることを実証した。新型コロナウイルス感染者の抗体検査にも応用可能で、検査現場での活用が期待される。
鳥インフルエンザ、特にH5 亜型鳥インフルエンザウイルス(H5-AIV)の中には非常に高い病原性を示す株が存在する。それらによる疾患は高病原性鳥インフルエンザとして家畜伝染病(法定伝染病)に指定されており、H5N1 亜型がヒトへ感染した場合の死亡率は50%を超える。このため鳥インフルエンザ発生時に迅速な亜型判定が求められるが、現在主流のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法は解析に時間がかかり、検査室でなければ測定できないという問題があった。簡易的に現場で利用できる抗体検査(イムノクロマト法)もあるが、正確さに欠け、定量的な評価ができないため、現場で簡便・迅速・大量に測定できる検査技術が強く求められていた。
そこで研究グループは、通過する光の偏光方向を制御する性質をもつ液晶とイメージセンサーを組み合わせ、蛍光偏光イメージングシステムを構築。抗H5-AIV抗体を蛍光偏光免疫分析法(FPIA)で検出することで感染履歴を判定する技術を開発した。さらに現場に持ち運べるよう設計し、重さ5.5kgのポータブル蛍光偏光測定装置を実現した。マイクロ流路チップにより少量サンプルで多検体を同時測定することも可能にした。
また、測定に使用する試薬も開発した。鳥から採取した血清と測定試薬を混合してマイクロ流体デバイスに導入し、ポータブル蛍光偏光装置にセットして偏光度を測定する。するとわずか2μLの血清量で20分以内に抗H5-AIV抗体を検出できる。
研究グループによると、同装置を用いた他の抗体やウイルス検出への応用を検討しており、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体の検出にも応用が期待できるという。