九州大学の宇都宮聡准教授らの国際共同研究グループ(注)は、プルトニウム(Pu)含有燃料微粒子を含む粒子を福島県の土壌から初めて発見し、多角的な先端微細分析を駆使してナノレベルでの解析に成功した。
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により放出された物質からプルトニウムの痕跡が検出されているが、これまで粒子の細かさからその物理的・化学的形態の解明は困難だった。一方、災害時に一部の放射性セシウムが水に溶けにくい高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)として環境中に放出され、関東地帯まで拡散。今回、この微粒子からプルトニウムを発見した。
研究では、CsMPに含まれる燃料微粒子について、最先端の二次イオン質量分析やシンクロトロン放射光マイクロビームX線分析、原子分解能電子顕微鏡によりウラン(U)とプルトニウムの同位体分析、化学種の同定を行った。
その結果、CsMP内部に酸化ウラン(IV)ナノ結晶を同定し、ウラン濃集部でのプルトニウム、ジルコニウム(燃料被覆管の成分)の局在化が示された。さらに、燃料微粒子中のウランとプルトニウムの同位体比が決定され(235U/238Uが約0.0193、240Pu/239Puが約0.347、242Pu/239Pが約0.065)、計算コードで算出された照射燃料の値と一致した。
これにより、プルトニウムは燃料微粒子としてCsMPに取り込まれて環境中に放出・拡散されたことが判明。また、炉内に残された燃料デブリ(溶融核燃料が炉構造物とともに冷えて固まったもの)中に、プルトニウムがナノスケールで不均質に分布することが部分的にだが直接示された。長期にわたる廃炉工程・燃料の取り出しのために必要なデブリ性状把握への貢献が期待される。
注:他に、国立極地研究所、筑波大学、東京工業大学、ヘルシンキ大学(フィンランド)、ポール・シェラー研究所(スイス)、ダイアモンド放射光施設(英)、ナント大学(仏)、スタンフォード大学(米)が参加、福島の災害復興貢献を目指し研究を共同で実施。