京都大学と東北大学は、資源の枯渇が懸念されている液体ヘリウムが不要の高温超電導コイルを三菱電機と共同で開発し、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)のミニモデルに搭載した。従来比2倍となる磁界強度3テスラでの撮像に成功したという。高い磁界強度のMRIはより高精細な画像診断を可能にし、病気の早期発見につながる。2020年度までに実用機の半分のサイズのMRIを試作し、その後、実用機サイズのMRIを完成させる。
開発した高温超電導コイルは、マイナス180度C以下で電気抵抗がゼロになるイットリウム系超電導線を使用。コイルの巻き線の精度を向上し、商用MRIに求められる磁界強度の均一性を確保した。さらに、MRIのミニモデルに搭載し、世界初となる3テスラまで磁界強度を高め、実際にマウス胎児の画像を撮像した。MRI以外の機器にも適用できる。京都大学がMRIミニモデル用の撮像システムを構築したほか、磁化による磁場乱れの対策を検討した。東北大学は、この磁場乱れの対策について実測評価を担当した。
超電導コイルは現在、液体ヘリウムを使ってマイナス269度C以下まで冷やす低温超電導コイルがMRIなどに使われている。しかし、液体ヘリウムは需要の急増などから将来は枯渇する恐れがあり、液体ヘリウムによる冷却が不要で、小型化も可能な高温超電導コイルの電気機器への適用が望まれている。