成蹊Wayで、Society5.0に求められる「総合的思考力」「創造的思考力」「真のコミュニケーション力」を育てたい
Q 今回の改革の目的をお聞きかせ下さい。
――「速い、広い、つながる」がキーワードとなるSociety 5.0 、AI時代※3を逞しく生きぬいていける人材を、成蹊Wayを柱にした教育で育成する、これが成蹊ブリリアント2020の改革理念です。これからの激しく変化する社会で、学生が活躍し、幸せに生きて行くのに必要な能力を身につけてもらうための教育、カリキュラム改革です。
Q 具体的にはどんな能力とお考えですか?
――この10年間でスマートフォンは世界を激変させましたが、Society5.0では、それ以上に大きな変化が予想されます。牽引するのはAI、中でもディープラーニングと呼ばれる機械学習技術。その技術でできることできないこと、得意なこと不得意なことを見極めれば、人間にしかできないことが見えてくる。
ただその前に、AIを作る側、使いこなす側、無関係に仕事をする側という3つの領域を想定して、どこに自分は軸足を置きたいのかを考えてみる必要があります。
多くの人にとって、それはおそらく2番目と3番目でしょう。ただ、3番目の領域はどんどん縮小していくと予測されますから、みな2番目、つまりAIを使いこなす側に回りたいと考える。その時求められるのが、「総合的思考力」「創造的思考力」「真のコミュニケーション力」であると私は考えます。
そして当然のことですが、AIを作る側に回らないにしろ、AIを使いこなすためには、一定程度以上のITに関するスキルや、それに対する理解力を持っておくことが大前提となります。もちろん文系学生においても、です。
Q 3プラス1、ですね?
――30年以上先はともかく、AIは社会常識や良識、見識といったものは持ちえないでしょうから、それを踏まえて総合的に考えることは人の手に残ります。またAIは、ビッグデータがあってはじめて力を発揮できるものですから、少ないデータ、あるいはデータのない状況での判断などは、やはり人間に委ねられる。その際、求められるのが洞察力であり、創造的思考力です。
「真のコミュニケーション力」とは、よく言われる《おもてなし》などに象徴される高度なコミュニケーション力です。最近は、会話するAI、感情表現するAIなどが時々紹介されますが、これらはそのふりをしているだけで、今のところ意思や感情のないAIには、そのキャッチボールである真のコミュニケーションはできません。
よく使われる譬えですが、タクシーのナビに交通量、気象データ、イベントなどの情報を入れれば、お客さんがタクシーをひろう確率の高い走行ルートをAIは割り出してくれる。これはベテランドライバーならではのスキルでしたが、それがAIに取って代わられる。しかしそれがドライバーの仕事の全てではありません。快適にタクシーに乗ってもらえるような声掛けや雰囲気づくりもドライバー、人間の仕事なのです。
同じことは飲食業にも言えます。ロボットによる調理・配膳でランチを150円で出す店が出てきても、目の前で職人さんが寿司を握ってくれ、会話も楽しみながら味わえる1万円のお寿司屋さんはなくならないと思います。人間には人間によるサービスを求めるところがある以上、そういったサービスを提供できる店、人も最終的には残ると思います。