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これからの地域に必要な「人材の学び」 − 令和4年度COC+R全国シンポジウム - 大学ジャーナルオンライン

令和4年度COC+R全国シンポジウムの講演その2は、「人材の学び」の観点から(株)Asian Bridge取締役で(一社)転勤ラボ会長理事の松田悠(はるか)氏が登壇。松本にもゆかりのある自身の体験、転勤族のキャリア形成支援、IT会社での仕組み化について語りました。

陸上選手、小売業、NPOが人生を創った

 私の経歴をお話ししますと、幼少期はひたすら陸上競技に没頭し、脚を故障して第二の人生はどうしようと思ったところから今につながる活動を始めました。高校生の時は観光地をコスモスで一杯にしようという活動もやりました。大学では都市計画やITを学び、もっと広い知見を持ちたいと国際協力で海外に行ったこともあります。そのあと、大手小売業に就職しましたが、社会貢献を数多くやっている企業で、それを世の中でどうビジネス化するかに興味が生まれ、環境学習情報センターを運営するNPO法人に転職。こどもと町をつなぐ授業を年間120回ほどやりました。人と出会うのが楽しくて、こういうことをやりたいと思っていたわけです。

 その頃夫が転勤になり、私自身の人生をどうしようと考えてフリーになったのですが、転勤族の奥さんたちが転職で困っていることを知り、どうやったら役に立てるんだろうと思い、アーバニストという資格を取りました。都市の創生に関わる仕事で、これは高校時代の活動ともつながります。それをITと結び付けて、キャリア形成を図る事業を展開中です。

 また、小売業時代に松本で働いていたこともあり、今日とても懐かしいなと思っています。

日本人の9割は社会に出ると勉強を止める

 日本人は、社会人になると9割は勉強しなくなるというデータがあります。でも、勉強することで世の中をよくできると私は感じていて、さらに何歳まで勉強したいかということも、今日のお題かなと思います。

 2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちのうち65%は、今は存在していない職業に就くと言われています。新しい仕事がどんどん出てくるし、私の子どももどうやって生きていくのだろうと日々思っていて、そこにはやはり学びが必要です。

 ライフワークバランスと言いますが、ライフの中にワークがあるのか、ワークの中にライフがあるのかという議論をよくします。私は今仕事中心で仕事が大好きなので、後者ですね。富山の出身で、5年前にUターンしましたが、地域のいいところはたくさんあると実感しました。同時に、地域の活性化を頑張っている人たちはたくさんいることも知りました。過疎地域で美容院もないところに美容院を作ったり、富山の医薬品会社がアロマの村を作ったりということもご紹介したいと思います。

転勤族の妻たち、その仕事を何とかしたい

 転勤族の奥さんたちの就労支援を扱っている法人は今までありませんでした。ならば私がやろうと思ったのです。転勤族の奥さんは夢が持てず、働き方が選べないというのは、社会との接点がないからです。少し鬱気味だったある奥さんが私の仕事を手伝ってもらうようになり、見ちがえるように幸せそうな顔になったのを見て、それに気付きました。

 転勤族の人口を調査したデータでは、540万人ぐらいだと言われています。これは日本の人口7位の兵庫県くらい。さらにその奥さんたちは290万人ほどで、茨城県の人口に匹敵する数です。それだけの人たちが地方最大の関係人口と言うことができます。外で働きたいという強い希望を持ち、資格取得をしている人も多いことが分かりました。そこから地域と転勤族は、Win-Winの関係になることが大切であると気付き、今富山県と関係人口と政策についてのプラットフォームを開発しているところです。また、大学から転勤族の妻たちにどういう学びを提供できるかという話も進めています。

 本人たちの意思とは関係なく社会と分断されてしまった人たちが、環境に関わらずイキイキと働ける社会を作りたいと強く思っていた時に今のAsian Bridgeと出会いました。そのモヤモヤをITが解決してくれたことに大きな可能性を感じたのです。

ITを地域ソリューションへつなげる

 Asian Bridgeは東京が本社ですが金沢に支社があり、私が入社後富山にもできました。富山ではママたちのテレワーク育成事業を始め、今100名ほどに仕事を渡す仕組み作りをしています。こうやってシステム開発、クラウドサービス、コンテンツ制作を進め、オンライン配信という新しい技術も活かしつつ、新しい学びも行ってソリューションに結び付ける取組を進めているところです。

 もともとAsian Bridgeとの出会いは、今回のCOC+Rにも関わるかと思いますが、金沢大学の共創型観光産業展開プログラムに参加したのがきっかけでした。IT会社は地方でどう成り立つかということを考えていた会社で、地方の売上を東京に持って行かれないために実際を知ろうと40社ほどに調査をしたのです。そのとき、ITを導入するにはハードルが高くなかなか難しいという声もありました。そこで、クラウドサービスとして仕事のマッチングを無料で行うサイトを開発。それによってIT導入の障壁をなくす結果になりました。転勤族のママさんたちがこれに登録することで、セカンドキャリア作りの応援にもつながっています。

インターンシップをきっかけに働き方が変わる

 金沢大学との共同研究では、インターンシップの実証実験も行いました。社会人インターンシップがなかなか浸透していないときにママの一人が就職を決め、これは世の中に役立つんじゃないかというところからビジネス展開につながりました。今は北陸事業部だけでなく、全国を回り、静岡オフィスも開設しました。転勤族のママに特化した活動は、一般社団法人を立ち上げて活動を続けています。

 まわりの地域企業への波及効果も現れはじめ、ある製造業の学生インターンがTwitterアカウントを開設したのをきっかけに、社内の人たちもチームとなって情報発信を始め、SNSから採用が来るまでに広がりました。この会社はふるさと企業大賞も受賞しています。自治体とのコラボレーションでは、ソリューションを作る以外にインターンシップの体験ツアーをやったり、移住者を抱えるなどの出口戦略も採っています。他には、地方テレビ局と組んでECサービスも始めました。その運営はママたちが行っています。

 はじめは転勤族だけが対象だったのですが、いろいろな人を巻き込みながら、例えば全国の自治体と女性活躍の取組を行うなどに広がってきました。また、スポーツ選手のセカンドキャリアやスポーツリーグのおカネをどう作っていくかについての挑戦も始めました。こうやって範囲を広げていくことで、関係する皆さんの可能性も広がっていけば、という思いを抱いています。

※シンポジウムの動画は、COC+R会員の皆様に公開しております。

●シンポジウム動画 一覧ページ
https://coc-r.jp/archives/

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