2023年度入試は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の数学平均点の大幅アップもあり、難関国立大学で志願者数が増加するなど受験生のチャレンジ志向も見られました。各社の情報サイトでは、入試結果の詳細な分析なども公表され始めています。
2023年度入試は志願者数が微減、2024年度も新増設学部ラッシュ
2023年度入試結果の分析が各社の入試情報サイトで公表されていますが、駿台予備学校の大学入試情報サイトでは、「2023年度 国公立大入試状況分析」、「2023年度 私立大入試状況分析」としてかなり詳しく解説されています。
これによると2023年度入試は国公立大、私立大ともに志願者数が微減となりましたが、共通テストの平均点アップを受けて、最難関の国立大学では志願者数が増加するなどのチャレンジ志向が見られました。京都大学、一橋大学、東京工業大学は志願者数が増加しており、特に一橋大の後期日程は前年比140%です。横浜国立大学は入試制度の変更により大幅に志願者数が増加しています。昨年は個別試験の実施を感染症対策のため中止しました。実質的には共通テストの得点のみで合否判定される方式となったため、高いボーダーラインが敬遠されて、志願者数がほぼ半減近くとなりました。今年は通常通りに個別試験が実施されたため、その反動が一気に出た形となっています。
また、一橋大学は首都圏の最難関国立大学で唯一後期日程を実施していることも影響していますが、新設されたソーシャル・データサイエンス学部の人気も志願者数増加に寄与しています。このように近年は有力な国立大学で新増設学部等の設置が目立ち、入試動向にも大きく影響しています。2024年度も国公立大学、私立大学で多くの新増設学部等が予定されています。詳細は駿台予備学校の大学入試情報サイトの「2024年度 国公立大新増設一覧」、「2024年度 主要私立大新増設一覧」で確認できます。
駿台予備学校 大学入試情報サイト
https://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/news/index.html
新設されるお茶の水女子大学共創工学部と理工系学部での女子枠の拡大
2024年度は、茨城大学地域未来共創学部、宇都宮大学データサイエンス経営学部、お茶の水女子大学共創工学部、熊本大学情報融合学環、熊本大学工学部半導体デバイス工学課程などいくつもの新増設学部等が予定されています。このほか山形県立の農林業系専門職大学、東北農林専門職大学も注目です。なお、これらは設置構想中あるいは設置認可申請中のため、学部名称などは全て仮称です。
このなかでもお茶の水女子大学共創工学部は、2022年度に設置された奈良女子大学工学部に続く、2つ目の国立女子大学の工学系学部として注目を集めています。予定では人間環境工学科26人、文化情報工学科20人と小規模な定員のため、、一般選抜、学校推薦型選抜などの選抜方式にかかわらず、入学者選抜のボーダーラインは高くなると予想されます。ただ、理工学系を目指す女子受験生にとっては、選択肢がこれまでよりも広がります。
理工学系志望の女子受験生に関しては、2024年度からは東京工業大学でも総合型選抜、学校推薦型選抜で女子枠が設けられます。新設予定の熊本大学情報融合学環でも学校推薦型選抜に女子枠が設けられる予定です。私立大学でも東京理科大学が3学部16学科の総合型選抜で女子枠を新設します。
このように2024年度からは、理工学系を目指す女子受験生にとってかなり選択肢が広がります。この女子枠については、新しく実施する大学に注目が集まりますが、名古屋大学は2023年から学校推薦型選抜に女子枠を設定しています。さらに言えば、芝浦工業大学は2022年度から公募制推薦入学者選抜(女子)を実施しており、加えて奨学金も給付しています。各大学で同様の施策が続くと、むしろパイオニアが埋没してしまうようです。
私立大学は5大学が新設予定、薬学部の新設も
私立大学でも新増設ラッシュは続いており、大学新設も5大学が予定されています。新増設学部では、東洋大学、日本女子大学などの人気大学でも新学部が設置予定です。首都圏の大学では武蔵野大学がウェルビーイング学部を設置します。武蔵野大学はこれまでもアントレプレナーシップ学部やサステナビリティ学科など意欲的な学部学科を設置していますが、どのような学問分野でウェルビーイングの学修体系を構築するのか、興味深いものがあります。設置構想中のためか、HPで公開されている情報はまだ限定的ですが、教育課程の詳細はこれから順次公表されるものと思われます。
このほか、医療系では、これまで看護系、リハビリテーション系の学科の設置は多く見られましたが、来年は薬学部の設置が予定されています。国際医療福祉大学成田薬学部と順天堂大学薬学部の2大学が設置を予定しています。薬学部は、特に創薬分野は受験生の人気も高いのですが、2000年代の初期から全国で新増設が続いたこともあり、現在では新増設が抑制される方向です。すでに大学間の競争が非常に厳しい学部系統の1つです。国公立大学は別として、私立大学間では定員充足率などにかなりの差があります。
文部科学省の薬学教育サイトでは、「薬学部における修学状況等」、「薬学部の6年制課程における退学状況等」が大学別に公表されています。これを見ると、2022年度入試の結果ですが、大学によっては定員充足率が、30%台、40%台の大学が散見されます。中には定員充足率28%の大学もあります。非常に厳しい数字です。さらに退学率を見ると、年度にもよりますが、50%を超えている大学もあります。2人に1人が退学する学部ですので、大学も辛いのですが、学生はもっと辛い状況にあると思われます。
このデータはかなりインパクトが強く、考えさせられることも多いので、進学指導に携わる方は、一度ご覧になることをお奨めします。
文部科学省 薬学教育サイト
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_d/08091815.htm